卒業ビザとは
大学学部卒業(学士)や大学院(修士・博士)をオーストラリアのCRICOS認定教育機関で修了(卒業)した留学生を対象に、卒業ビザ制度(Temporary Graduate Visa サブクラス485)がオーストラリアに導入されています。これはオーストラリアのビジネスビザ制度が厳格化されたことを受けた配慮とも言えるビザ制度で、留学生がオーストラリアの大学卒業後にオーストラリアで仕事につくチャンスを増やすという主旨があります。オーストラリアの大学進学留学をする目的の1つに、オーストラリアでの就職や永住ビザを考えているのならば検討しておきたいビザとなります。日本から留学する前に、オーストラリアの卒業ビザは申請できません。高等教育機関に学生ビザ(サブクラス500)で渡航し、卒業した後に申請することになります。留学前に気をつけておきたいポイントは、対象となる学校なのか、自分が申請できる資格があるのかという点です。
できること
オーストラリアの卒業ビザでは大きく3つのことが許されています。
・学業修了後、オーストラリアに18ヶ月間から最長3年間滞在できます。
・滞在中、旅行、就労、または学業を行えます。
・滞在中、働くことができます(ビザ期間中の雇用は自ら探す必要があります)
申請条件
卒業ビザ制度は、次の二つの申請制度が含まれています。
①ポストボケーショナルエデュケーションワークストリーム(旧:グラデュエートワークストリーム)
②ポストハイヤーエデュケーションワークストリーム(旧:ポストスタディワークストリーム)
③セカンドポストハイヤーエデュケーションワークストリーム(旧:セカンドポストスタディワークストリーム)
1.Post-Vocational Education Work stream
(ポストボケーショナルエデュケーションワークストリーム)
滞在期間:最長で18ヶ月間
申請費用:2,300豪ドル(目安)
※配偶者・扶養家族は別途料金、健康診断、警察証明書、バイオメトリクス提出などには追加費用がかかる可能性あり
申請条件:
・応募時に35歳以下であること
・ビザ申請時にオーストラリア国内に滞在していること
・申請時点で、移民局が指定する有効なビザ(例:学生ビザ、Bridging A / Bridging B など)を保持していること
・対象となる教育を受け、過去6ヶ月以内に卒業していること(アソシエイトディグリー(準学士号)、ディプロマ(2年以上))
※学士号以上の学位を取得している場合は申請不可(Post-Higher Education Work stream が対象)
・MLTSSL(Medium and Long-term Strategic Skills List)に掲載されている職業に関連する資格を取得していること
参照:MLTSSLリスト
・熟練職業リストで指定された職業の技能評価を申請していること
・申請時に申請者全員が適切な海外学生健康保険、または同等の健康保険に加入していることを証明する書類を提出すること
申請時に、オーストラリア連邦警察(AFP)のNational Police Checkを申請していることを示す証拠を提出すること
・申請時に必要な英語レベルを証明する書類を提出すること
英語力について詳しくはこちら
参照:Post-Vocational Education Work stream
2.Post-Higher Education Work stream
(ポストハイヤーエデュケーションワークストリーム)
滞在期間:通常2~3年間(学士号、修士号、博士号などの学位により異なります)
※最新情報は移民局公式ページをご確認ください。
申請費用:2.300豪ドル(目安)
※配偶者・扶養家族は別途料金、健康診断、警察証明書、バイオメトリクス提出などには追加費用がかかる可能性あり
申請条件:
・申請時に35歳以下であること
※修士号(リサーチ)または博士号(PhD)を取得している場合は、50歳未満であること
・ビザ申請時にオーストラリア国内に滞在していること
・申請時点で、移民局が指定する有効なビザ(学生ビザ、Bridging A / Bridging B など)を保持していること
・対象となる教育を受け、過去6ヶ月以内に卒業していること
・申請時に申請者全員が適切な海外学生健康保険、または同等の健康保険に加入していることを証明する書類を提出すること
・申請時に、オーストラリア連邦警察(AFP)のNational Police Checkを申請していることを示す証拠を提出すること
・申請時に必要な英語レベルを証明する書類を提出すること
英語力について詳しくはこちら↓
参照:Post-Higher Education Work stream
3.Second Post-Higher Education Work stream
(セカンドポストハイヤーエデュケーションワークストリーム)
このビザストリームは、地方エリアにあるオーストラリアの教育機関で学位を取得し、Post-Higher Education Work、Post-Study Work、またはReplacementビザを保有する卒業生向けです。
滞在期間:通常1〜2年間
申請費用:905豪ドル(目安)
※配偶者・扶養家族は別途料金、健康診断、警察証明書、バイオメトリクス提出などには追加費用がかかる可能性あり
申請条件:
・申請時に35歳以下であること
※修士号(リサーチ)または博士号(PhD)を取得している場合は、50歳未満であること
・ビザ申請時にオーストラリア国内に滞在していること
・現在、Post-Higher Education Work、Post-Study Work、または Replacement Stream の Temporary Graduate(Subclass 485)ビザを保持していること
・最初の Temporary Graduate ビザ取得時の学位が、指定地域内(designated regional area)の教育機関で取得した degree-level qualification であること
・ビザ申請前に、少なくとも連続2年以上、指定地域(designated regional area)に居住していること
・申請時に申請者全員が適切な海外学生健康保険、または同等の健康保険に加入していることを証明する書類を提出すること
・オーストラリア連邦警察(AFP)の National Police Check を申請済みであることを示す証拠を提出すること
・必要に応じて、英語要件を満たしている証明書類を提出すること(すでに485ビザを保持している場合、提出が免除されるケースあり)
参照:Second Post-Higher Education Work stream
よくある質問
卒業ビザで留学期間を伸ばすなら英語力の証明が必要?
Temporary Graduate Visa(卒業ビザ/Subclass 485)を申請する際には、IELTSなどの政府認定英語テストを受験し、英語力を証明する必要があります。オーストラリアの大学へ進学する際、パスウェイ(大学認定の英語コース)を修了して入学基準を満たした場合でも、卒業ビザの申請では別途英語テストのスコア提出が求められます。
また、英語テストのスコアには1年間の有効期限が設けられています。そのため、1年以上前に受験したスコアは卒業ビザの申請には使用できません。卒業ビザで滞在期間を延長したい場合は、期限内のスコアを準備しておきましょう。
| Test Sub-skill | CELPIP General |
IELTS Academic |
IELTS General |
LANGUAGECERT Academic |
MET | OET | PTE Academic |
TOEFL iBT |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Overall | 8 | 6.5 | 6.5 | 67 | 58 | 1310 | 55 | 81 |
| Listening | 6 | 5.5 | 5.5 | 49 | 53 | 260 | 40 | 12 |
| Reading | 6 | 5.5 | 5.5 | 54 | 51 | 280 | 42 | 12 |
| Writing | 6 | 5.5 | 5.5 | 56 | 51 | 260 | 41 | 14 |
| Speaking | 6 | 5.5 | 5.5 | 62 | 43 | 310 | 39 | 17 |
オーストラリアで大学入学に必要な英語力の基準がIELTS6.5程度(専攻によって異なる)であることを考えると、留学生にとってスコアの取得は難しくはないレベルです。しかし、ビザ申請時点で英語スコアの証明が必要となるので、テストを受ける時期を留学スケジュールに盛り込んで受け忘れを防ぎましょう。
卒業ビザ申請に必要な就学条件とは?
日本人がオーストラリアで大学や専門課程を修了し、卒業ビザを申請するためには、一定の「就学条件(Australian study requirement)」を満たす必要があります。主なポイントは次のとおりです。
■ 卒業ビザに必要な就学条件(Australian study requirement)
①2学年以上に相当する就学(92週間以上のCRICOS登録コース)であること
・複数のコースを組み合わせて2年以上に到達させることも可能です。
・ただし、語学学校(ELICOS/EAP)での学習期間はカウント対象外です。
②AQF5(Diploma)以上の資格を取得していること
・Diploma(AQF5)、Advanced Diploma(AQF6)、Bachelor(AQF7)、Master(AQF9)、Doctoral(AQF10)などが該当します。
・Graduate Certificate(AQF8)、Graduate Diploma(AQF8)も対象ですが、単体では半年〜1年で終了するケースが多く、
多くの学生はMasterコースへの進学と組み合わせて2年要件を満たす形になります。
③卒業(または修了)してから6か月以内に申請していること
・学生ビザを過去6か月以内に保持していたことも必要です。
■ 対象となるコースレベルについて
ディプロマや学士・修士など、AQF5以上の資格であれば卒業ビザの条件に該当します。日本では馴染みが薄い Graduate Certificate や Graduate Diploma も AQF8 に分類されるため対象です。
ただし、Graduate Certificate(約6か月)や Graduate Diploma(約1年)のような短いコースのみでは「2年以上の就学条件」を満たせないため、Master(修士)へ進学して合計2年以上にする必要があるケースが多い点に注意が必要です。
■ 専攻(学科)の指定について
Post-Higher Education Work stream の場合、学科や専攻の指定はなく、CRICOS登録されたAQF7以上のコースで2年以上就学していれば申請可能です。分野はビジネス・IT・工学・デザインなど問われません。
一方で、Post-Vocational Education Work stream は「MLTSSL職種に関連する資格」が必要となるため、専攻が重要になります。
■ CRICOS登録コースであること
卒業ビザは Student visa(学生ビザ)での就学を前提としているため、コースが必ず CRICOS(Commonwealth Register of Institutions and Courses for Overseas Students)に登録されていることが必要です。CRICOSに登録されていないコースは、卒業ビザの就学要件としてカウントできません。
オーストラリア留学で挑戦する幅を広げたいなら卒業ビザを目指そう
オーストラリアで大学や専門課程を修了した留学生が取得できる卒業ビザは、学業の成果に対する“ご褒美”とも言える制度です。滞在できる期間は、卒業した学位や申請するストリームによって通常約18か月〜3年間と幅がありますが、このビザを取得すると、フルタイムで働くことが可能 となり、オーストラリアで本格的にキャリアをスタートしたい方には非常に有用です。職場経験を積むことで、将来的に雇用主スポンサー(Employer Sponsored Visa)を得るチャンスが広がるほか、独立技術移民ビザ(Skilled Migration)で必要なポイントを貯める期間として活用する留学生も多く見られます。
もちろん、専門学校や大学卒業後に申請できるため 長期的な留学プランにはなりますが、「海外でキャリアを築きたい」「将来的に永住権獲得の可能性を広げたい」という方にとっては、卒業ビザは非常に価値の高い選択肢です。
※2025年12月時点の情報を元に作成しており、移民法上のアドバイスを目的に作成されたものではありません。ビザの情報は必ずオーストラリア移民局のホームページより最新の情報をご確認ください。また、ビザ制度のみのご質問について弊社では承れませんのでご了承下さいませ。


































