ただ、一言に海外インターンと言っても、内容は多岐に渡ります。例えば、期間は数日のものから3ヶ月以上のもの、職場も日系企業のものから海外企業のもの、給与も有給のもの、無給のものとさまざまです。
長期休暇を利用して参加できる短期間のインターンであれば、大きなリスクやデメリットはありません。しかし、大学を休学する必要のある長期間のインターンとなると、学年が一つ遅れる、また同学年の学生と異なる就活スケジュールで動かなければならないなど、リスクやデメリットも出てきます。そこで、今回は後者の長期海外インターンに焦点を当て、そのメリット・デメリット、加えてインターン経験を就職活動やその後のキャリアに活かすためのポイントをご紹介いたします。
*キャリタス就活 2026 学生モニター調査結果(2025年3月発行)参照
1.海外インターン5つのメリット▼ |
2.海外インターン3つのデメリット▼ |
3.海外インターン経験を就職活動で活かすために重要なこと▼ |
4.まとめ▼ |
1.海外インターン5つのメリット
留学にはさまざまな制度、プログラムがあります。英語の勉強に集中することのできる語学留学や働きながら海外生活を経験できるワーキングホリデー、海外の大学に一時的に在籍し単位取得できるスタディアブロードなど、さまざまです。
各々の留学プログラムにはメリット・デメリットがあります。海外インターンはこれら他の留学プランと比較した際、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、日本でも近年注目を集めるインターンと海外でのインターンと比較した際、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは大きく5つの点でご紹介したいと思います。
参照:目標・目的から海外留学を選ぼう →
メリット1.英語力 – ビジネスシーンで生きる英語力を身に付けられる
1つ目は、英語力についてです。
皆さんがイメージされている通り、海外の企業で働くことは決して簡単なことではありません。なかでも英語力は高いレベルを求められます。インターン中はもちろんのこと、ホストカンパニーから内定を獲得するまでの選考シーンでも日常生活のなかでは頻繁に使用しない単語、表現、言い回し(ビジネス英語)を積極的に使用することになるでしょう。
日本でも新入社員が電話応対や社内で上司との会話に苦労しているなんて話を聞いたことはありませんか?例えば、友だちとの電話であれば「もしもーし、あぁ俺だけどー」と始められる会話が職場では「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇〇のXXでございます。」となります。これは海外でも同様で友だちとであれば“Hi, it’s me speaking.”でよかったのが“Thank you for your calling. This is 〇〇, speaking please.”となります。また、「決済」「売上」「在庫」、他にも近年日本でもビジネスシーンで頻繁に耳にする「KPI」「KGI」などの用語も、特に大学生の場合は普通に大学に通いバイトしているだけでは使用する機会は少ないと思います。
つまり、海外ビジネスインターンを利用し海外の企業で働く経験を積むことで、ワーキングホリデー制度を利用し飲食店でアルバイトをしたり、語学学校で英語を学んだりするだけでは習得することが難しい「ビジネスシーンで生きる英語力」を身につけることができるのです。
メリット2.1歩上の「社会人基礎力」を身につけることができる
2つ目は「能力」「資質」についてです。
本格的な就業体験を通じて「社会人基礎力」を身につけることができます。なかでも主体性や発信力、課題発見力の向上には期待ができます。少子高齢化に伴い、女性の社会進出促進、高齢者や外国人労働者の雇用促進などを背景に、異なるバックグラウンドをもつ人々とともに働く必要性が高まる日本において、発信力や主体性の欠如は大きな課題になる部分です。
もちろん、一般的な語学留学やワーキングホリデーでも、多国籍な環境でアルバイトしたり、勉強したりすることはできます。しかし、勉強するのと働くのとではそもそも求められる積極性や主体性、発信力のレベルが異なります。またアルバイトとインターンとでは得られる経験が異なります。(アルバイトとインターンの違いについては「ワーキングホリデーやアルバイトとの違いとは?」でも説明しています。あわせて読んでみてくださいね)
海外ビジネスインターンシップでの経験は、大学生にとって社会人基礎力を身につける貴重な機会になることはもちろん、すでに社会人経験をお持ちの方にとっても主体性や発信力、課題発見力など各能力をグローバルな環境で磨くよい機会となります。
「社会人基礎力」とは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力のことを指します**。具体的な要素としては、主体性・働きかけ力・実行力・発信力・傾聴力・柔軟性・情報把握力・規律性・ストレスコントロール力・課題発見力・計画力・想像力の12つの能力要素が挙げられます。 抜粋: 経済産業省のホームページ参照
メリット3.ビジネスシーンで活きる異文化理解力を身につけられる
海外ビジネスインターンのメリット3つ目は「ビジネスシーンで活きる異文化理解力を身につけられる」ことです。
インターン期間は3〜6ヵ月程度ではあるものの、多彩な文化・習慣のなかで本格的に働くことができます。そして、就労を通じて「『違い』に対してどう向き合うのか?」を学ぶことができます。
例えば、日本と海外とでは女性の社会進出率が大きく異なります。
世界31カ国の中堅企業の経営幹部における女性登用率を記録した「Women in business 2025」ランキングによると、日本は2025年時点で最下位です。女性が多く活躍する職場では就業時間や就労環境に対する柔軟性が高いことが多いです。例えば、管理職であっても時短勤務だったり、お子さんを会社に連れてきていたり、日本の職場ではなかなかイメージのわかない状況があるのです。他にも、宗教に対する配慮やLGBTQ(性的少数者)に対する理解など、日本ではなかなか話題にもあがらないような「違い」に遭遇することがあります。
アルバイトや学校であれば「よくわからない」「苦手だな」という意識で避けて通れてしまうことでも、仕事となるとそうはいきません。これらに向き合うことで、異文化理解力を身につけることができます。
「違い」を理解することが、なぜ今重要視されるのか?
それは、日本を取り巻く状況の変化にあります。例えばひと昔前は良い品を作って販売すれば売れるという時代がありました。しかし、外国人労働者の雇用、海外マーケットへの参入などに伴い、良し悪しの基準も多様化し、日本人だけが良いと感じる品を作っても販売の仕方をしてもモノは売れない時代になりました。
実際、外国人労働者は年々増加しており、2024年10月時点で約230万人と過去最高を更新***しています。ともに働く人、生活する人が各々まったく異なる文化や習慣、信仰や価値観のなか、効率よく成果を出すためにも、異文化理解力が非常に重要とされているのです。
***厚生労働省発表「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)参照
メリット4.将来のキャリアを考えるきっかけになる
海外での長期インターンシップ経験は、将来のキャリアを考えるうえで非常に大きなきっかけとなります。単なる研修とは異なり、実際の業務に深く関わることで、ホストカンパニーの一員として責任ある仕事を任される機会があり、現場で求められる実践的なスキルを身につけることができます。業務を通じて課題を乗り越える経験は、大きな達成感や自信にもつながります。
実際のビジネスの現場で働くことで、教室では得られない実践的なスキルや知識を習得でき、自分の適性や興味を具体的に把握することが可能になります。特に海外では、異文化の中で働くことにより、自分の価値観や考え方が相対化され、多様な視点を持つことができるようになります。これは、グローバル化が進む現代社会において、非常に重要なスキルです。また、言語や文化の壁を乗り越えて業務を遂行する中で、自分の強みや弱みが明確になり、自己理解が深まります。さらに、現地での仕事を通して、実際のビジネス環境に触れることで、自分がどのような職種や業界に興味を持っているのか、将来どのような働き方をしたいのかといったキャリアの方向性を具体的に考えるきっかけになります。このように、海外での長期インターンシップは、実務経験の獲得にとどまらず、自分自身の可能性を広げ、将来のキャリア選択に対する視野を広げる貴重な機会となるのです。
メリット5.就活が有利になる
海外インターンに参加する大きなメリットは就活が有利になるということです。ご紹介してきたメリット1~4にもあるように、海外インターンに参加することで日本ではできない経験を数多くすることができるでしょう。たとえ失敗したことやうまくいかなかったことがあっても、どうにか工夫して乗り越えたという経験が就職活動の際には企業からの一つの評価になることでしょう。また、英語力はもちろん異文化理解力や発信力など様々な力を得てくることで、今まさに日本の企業が求めるグローバル人材により近づくことができるというメリットもあります。
併せて読みたい記事「大学生だからこそ挑戦すべき海外インターンシップとは」
2.海外インターン3つのデメリット
では、海外インターンに参加することのデメリットはどのような点でしょうか。ここでは3つお伝えします。
デメリット1.語学留学や学部留学と比べて勉強できる時間が短い
語学留学や海外の大学で授業を受ける学部留学の場合、すべての時間を勉強に充てることができます。しっかり勉強したいという方におすすめのプログラムといえるでしょう。一方で海外インターンの場合、目的は「英語を勉強すること」ではなく「学んだ英語を使って海外の企業で働くこと」にあります。結果、語学研修に充てる時間は短くなります。
短い期間でビジネスシーンで通用する英語力を身につけるのはそれ相応の努力が必要です。また、インターンの選考を通過し、無事仕事を始められたとしても、ネイティブとの英語力の差に苦労することは多いことから、忍耐力やストレス耐性も重要となります。勉強だけが目的ではない留学プログラムがゆえに、とにかく勉強に集中したいと考えている方に海外ビジネスインターンはむきません。ただ、英語を勉強する明確な目標・目的を常にもち続けることができるという点やインターン開始後はネイティブ環境に身を置くことができるという点などから、英語力の向上機会は多いとも言えます。
学校で勉強できる時間が短いというデメリットを踏まえてでも挑戦しようという覚悟をもって挑戦しましょう。
デメリット2.大学を休学しなければならない
留学プログラムや制度のなかには「交換留学」や「認定留学」と呼ばれ、生徒が留学中に海外の大学で取得した単位を認定し、帰国後の進級を認めるものがあります。しかし、海外インターンは海外の大学でなにかしら単位を取得することを目的とした留学ではありません。よって、ほぼ100%の確率で「休学」する必要が出てきます。
休学しなければならないことによるデメリットは休学費用が発生するという点と卒業を1年送らせなければならないという点です。グローバル人材育成を働きかける国の方針にならい、留学による1年間の遅れをマイナス評価する企業はほぼなくなりました。また休学費用を下げる大学も増えてきてきています。とはいえ、私立大学ではまだまだ休学費用をとる大学も多くあります。
留学プランを決めるうえで最も重要なことはお金や時間ではないと思います。しかし、これらのデメリットも踏まえ納得のいくプラン選びをしましょう。
プランを選ぶ際には「海外インターンシップvs認定留学とどちらが良い?」も参考にしてみてくださいね。
デメリット3.経験値に個人差がでる
経験値に差が出るのは、どんな留学をしても言えることです。同じ語学学校で同じレベルで勉強をスタートしたとしても英語力の伸びには個人差があるでしょう。また同じ大学で同じ授業を履修していたとしてもそこで得られる知識や人脈などには、「差」が生じることでしょう。
ただ、語学学校や大学での勉強がお金を払い「与えられるもの」である以上、それをきちんと消化すれば最低限得るものは等しくあると言えます。一方、インターンの場合、受け入れ先の企業も違えば、業種、職種、期間などさまざまな条件・環境が異なります。当然社会情勢などの影響もあるでしょう。また、任される仕事の量も質などはインターンに参加する個々人の能力や経験、資質に依存するところが大きく、与えられるものに最低保証はありません。つまり数ある留学プログラムのなかでもかなり挑戦的なプログラムだということがわかります。
大学を卒業し社会の荒波のなか謙虚に忍耐強く継続して努力する姿勢や能動的に働きかける姿勢など社会にでて働く準備を整えるには非常に魅力的なプログラムです。一方、上記のようなデメリットを含んでいる点を考慮し、プログラム参加を決断するようにしましょう。
3.海外インターン経験を就職活動で活かすために重要なこと
企業の選考において重要な点は
・社会で活躍する準備ができているか
・募集する人の中で相対的に魅力があるか
・職種に合わせた適性を満たしているか
大きくわけてこの3点です。
海外の企業で働くという経験は特別なものですが、参加しさえすれば就活がうまくいくわけではありません。海外インターンで得た経験をこれら3つのポイントそれぞれにきちんと訴求できるようになるために以下の点をぜひ踏まえて挑戦いただけるとよいと思います。
留学中の日記をつける
日記をつけるといっても日常をつづるのではありません。留学中は、言葉や文化、習慣など普通に暮らしていてもぶつかることが多々あります。苦労したことぶつかったことなどに対しそのとき自分がどのように感じ、何をもって乗り越えたのか、またそれらの出来事から何を学んだのかなどをきちんと書き留めておくようにしましょう。自己分析や企業研究するうえで重要な材料となるこでしょう。
TOEICは900以上を目指す
日常会話とビジネスシーンにおける会話に焦点をあてたTOEICは、海外ビジネスインターンに参加する方にとって最もスコアを取得しやすい試験の一つと言えます。英語の必要性を感じることも多くなった昨今、日本人であっても700点台は珍しくなくなってきました。留学経験があるとなればなおさらです。900点以上を取得することで留学経験にさらなる自信をもつことができるようになります。また英語人材を求めるグローバル企業での選考も通る可能性を高めてくれることでしょう。
参照:海外インターンシップは就職活動に有利に働くの? →
留学前後での自己分析を徹底する
自己分析とは過去の経験や感情を振り返り、言語化することで、自分自身の本質に迫る作業です。自分のこれまでの経験や思考を整理し、自分の能力や性質、強みや弱み、今後のありたい姿などを理解するための作業ですが、簡単にできそうで意外と難しく、就活本番になり、いざやろうと思うと戸惑う方も少なくありません。
海外インターンに関わらず、海外留学はみなさんにとって非常に大きな人生経験となります。だからこそ、留学前・留学中・留学後、それぞれのタイミングで都度、各フェーズで得た経験や感情を振り返り、整理し言語化できるようにしておくことが重要です。
留学前には、「なぜ参加したいのか」「何を学び、どんなスキルを身につけたいのか」を具体的にすることが鍵となります。自分の強み・弱みを探し出し、将来のキャリア目標をイメージすることで、高いモチベーションで臨むことができます。
留学中や留学後では、経験したことや学んだこと、直面した課題、乗り越え方などをこまめに記録することで、自己成長と身についたスキルを客観的に評価することができます。その結果、就職活動での強力な自己PRとなることでしょう。
帰国後の就職活動を踏まえたスケジューリングを行う
海外インターンシップは非常に貴重な経験ですが、日本の就活期間に合わせた計画を立てる必要があります。
日本での就活期間と渡航期間が重なる可能性があるため、自身の卒業年度や就職活動の開始時期を考慮し、帰国後に余裕を持って行動できるよう、逆算して計画を立てましょう。
海外滞在中も、就活情報サイトや大学のキャリアセンターからの情報を定期的に確認し、履歴書やエントリーシートの準備、自己PRの構成、企業研究などを渡航中から少しずつ進めておくことで、帰国後スムーズに就職活動に移ることができます。
参照:海外インターンに参加するベストなタイミングとは? →
めざす業界が決まれば必要なスキルや知識を身につけておこう
社会人の方の場合、留学から帰国後、転職活動をするまでの間に時間を設けるのはむずかしいかもしれません。しかし、あなたがまだ大学生であれば、目指す職種や業種を絞った後、その分野で求められる知識やスキルを身につけるのはおすすめです。
例えば、IT系の企業に興味をもったのであればプログラミングなどを短期集中で学んでみるのも一つです。旅行業界等に興味をもったのであれば旅行業務取扱管理者の資格に挑戦してみるのもよいでしょう。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は海外インターンのメリットとデメリット、そして就職活動で活かすために重要なことについてご紹介しました。海外インターンに参加することで、英語力のみならず社会人基礎力と異文化理解力を高め、将来のキャリアにつながる経験が積めるということがお分かりになったかと思います。海外インターンシップについてより詳しい費用やスケジュール、学校のことなどを知りたいという方は留学コンサルタントへご相談ください。