留学前に必ず確認したい海外の治安情報と留学中の安全対策
留学する、または留学させる際に、最初に心配になるのは、「治安」と「留学費用」ではないでしょうか。実際に、留学カウンセラーの仕事をしているなかで、国や教育機関の後押しもあって、留学する方の年齢は年々、低年齢化しているように感じています。特に中学生、高校生、大学生の時代に留学する方の数は非常に多く、留学するご本人様はもちろん、留学へ送り出すご両親様からも留学先の治安に関するご心配やご質問は多くいただきます。
留学にかかる費用については、以前掲載した記事:海外留学費用ってどれくらいかかる?全プラン対応【最新版】にて説明しているため、今回は、留学先の治安について、主には治安情報の収集方法と海外留学中の安全対策について説明したいと思います。
1、そもそも「治安」の良い・悪いって何を物差しに見たらいいの?
2、海外(留学渡航先)の治安を情報収集するための方法・ツールは?
3、留学中の安全対策
4、さいごに。
1、そもそも「治安」の良い・悪いって何を物差しに見たらいいの?
そもそも「治安」が良い・悪いとはそれぞれどのような状態のことなのでしょうか。
さっそく、Wikipediaで調べてみました。
治安とは、警察・軍隊などの強制力によって反乱や暴動などの社会的混乱を鎮圧し、さらには殺人、強盗、放火などの犯罪を取締ることによって国家の安寧秩序が保たれていること。これを保持することを治安維持(ちあんいじ)と言う。そのため国家は治安維持のために法律を定めて司法機関・警察を組織する。‐‐Wikipedia
……フィリピンのように、「麻薬撲滅」を掲げた大統領が国民をまだ「容疑」の段階で、司法の判断を仰ぐこともなく、国家権力を用いて、殺害している状況などは、「警察・軍隊などの強制力によって反乱や暴動などの社会的混乱を鎮圧」している状況かと言われると非常に難しい判断となると思いますが……。
街角の死体、地獄絵の刑務所──フィリピン「麻薬撲滅戦争」の実態 (4/4) 〈AFPBB News〉|dot.ドット 朝日新聞出版 https://t.co/Qhbiq5aSTP
— ウォンバットくん@ワールドアベニュー (@WorldAvenueJPN) 2017年5月1日
つまり、国が、警察や司法機関など国の強制力を持って、あらゆる犯罪をきちんと取り締まることで、国家の安寧秩序が保たれている場合=治安が良い状態で、国家の安寧秩序が保たれていない=治安が悪い状態ということですね。
「治安」を心配するとき、留学する本人、または留学させるご家族は具体的にどのようなことを心配に思っているのでしょうか。
・ひき逃げにあうことでしょうか。
・お財布やその他貴重品を盗まれてしまうことでしょうか。
・銃撃戦の流れ弾に当たって死んでしまうことでしょうか。
・クレジットカードのスキミング、盗難にあうことでしょうか。
・テロに巻き込まれることでしょうか。
もちろん、考え出せば夜も眠れなくなってしまうほど、ありとあらゆる犯罪に巻き込まれることが心配だとは思います。ただ、お財布が盗まれても、クレジットカードがスキミングされても、命さえあれば、なんとでもなります。テロについては、日本の東京も世界有数の大都市のため、常にテロの危険とは隣り合わせです。よって、海外だから、特別危険な地域に留学するということでない限り、特別どうのこうのということではありません。上記には記載しませんでしたが、日本は世界の中でも代表的な地震大国であり、その他の自然災害も多い国です。すると、やはり心配なことは、「殺されてしまったらどうしよう」ということではないでしょうか。
日本人の私たちの感覚でいうと「海外の治安が悪い」というのは、すなわち「殺人発生率が高い」というイメージなのではないでしょうか。
では、世界的にも「治安が良い」とされている日本の場合、他殺者数はどのくらいなのでしょうか。
下記は、1965年以降の他殺による死亡者数です。
参照:厚生労働省「人口動態統計」
現在の他殺者数は、年間で300名前後です。対して世界の他殺者数はどうなっているのでしょうか。
参照:国連の犯罪調査統計及び各国の司法当局、国際刑事警察機構
アメリカは日本の15倍もの数字をたたき出していますね。ただ、銃社会であるアメリカのイメージとしては適切なイメージかもしれません。驚くべきは、格安留学で近年注目を集めるフィリピンと治安のよい国として認識されているカナダではないでしょうか。自然豊かで、人々はフレンドリー、治安がよいという観点でも、評価の高い国というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、そんなイメージを覆す日本の5.5倍の他殺者数という結果が出ています。フィリピンは、日本の他殺者数の約32倍……。もはや平和な国の代表格のような日本で暮らす私たちには想像し得ない世界が広がっていることがわかります。
余談ですが、他殺者数に関して、表に記載はしていませんが、1965年以前、第二次世界大戦が終了した1945年以降、最も多いときで2,119名(1955年)と、現在の7倍以上の他殺者数が記録されており、「平和だった」と言われる昔は、猟奇的な犯罪が溢れているという印象の現代よりもはるかに治安が悪かったことがわかります。
ただ、不思議なことに、当時を生きてこられた高齢者の方を含め、現代社会を生きる人々は昔よりも今の方が治安の悪化を感じているという調査結果もでており、私たちの体感治安がいかに、メディアからの影響を受ける不確かなものだということがわかります。
旅行会社や留学エージェントが打ち出す、リゾートだけのイメージでフィリピンやアメリカ(ハワイ含む)を留学先に選ぶ前に、正しい認識をきちんと持ち、そのうえで、その国に留学すべきかどうかをご判断いただくことをおすすめします。
2、海外(留学渡航先)の治安を情報収集するための方法・ツールは?
「各国の治安情報を知るためにはどうすればよいのだろう?」「何を見れば、『本当のこと』がわかるんだろう?」と思われた方に、海外の正確な治安情報を入手するための方法とツールをご紹介します。
海外安全対策 | 外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/ipr/page7_900143.html
外務省 海外安全ホームページ
HP:http://www.anzen.mofa.go.jp/
外務省 海外安全ホームページ
外務省の海外安全ホームページでは、各国、各地域の現在の海外安全情報を視覚的に確認、情報を収集することができます。例えば、フィリピンへの留学を検討している…でも、治安面が心配だな…と感じたら、上記のページにある世界地図の中から東南アジアをクリックします。すると、「東南アジア地域海外安全情報」のページに切り替わります。ページ左上あたりに表示される「危険地図ポップアップ」というボタンを押すと、下記のように現時点での治安情報を確認することができます。
ちなみに、黄色はレベル1で、「十分に注意してください。」とい意味になります。具体的には、その国・地域への渡航、滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要です。という意味です。2017年6月22日現在、黄色のレベル1だけではなく、濃いオレンジのレベル3の地域も存在します。レベル3は「渡航はどのような目的であれ辞めてください」という意味になります。できる限り、渡航は避けた方がよさそうですね。
上記のような情報を携帯でも気軽に確認できるのが「外務省 海外安全アプリ」です。
URL:http://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/oshirase_kaian_app.html より詳細の詳細をご確認いただけます。
ダウンロードすると、アプリとして、先のような海外各国・各地域の治安情報を入手することができりと共に、「海外安全 虎の巻」という海外旅行のトラブル回避マニュアルを閲覧することができます。
ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル
HP:http://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_info/golgo13xgaimusho.html
LINE登録ができ、登録すると、ゴルゴとLINEトークできるようですね(笑)
たびレジ – 外務省海外旅行登録
HP:https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
たびレジとは、上記のホームページより、ご登録いただくことによって、希望の留学先、滞在先の最新の海外安全情報や緊急事態発生時の連絡メール、また、いざという時の緊急連絡などが受け取れるようになります。
海外安全情報 – ラジオ日本 – NHKワールド
HP:https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/anzen/
最新の海外治安情報を、音声で入手できるのは嬉しいですね。隙間時間、移動時間に気軽にチェックできそうです。留学するご本人様ももちろんですが、留学へ送り出すご両親様も、持っておくとよいかもしれません。
3、留学中の安全対策
ただ、本当に留学したいと考えているのであれば、いつまでも治安が心配、治安が不安とばかりも言っていられません。きちんと海外の治安情報を入手し、いざという時の体制を整えたら、踏み出すほかありません。
ここでは留学期間中に、どのように安全対策すべきか?をご紹介します。
①まずは「意識」を変えること!
まずは「意識」を変えることがとても大切です。外務省やNHKニュースなどからの事前の情報収集をもって、きちんと気持ちの準備を行い、「ここは日本じゃないんだぞ!」ときちんと自分自身に言い聞かせ留学するようにしましょう。
②危険な場所には近づかない!
日本でも夜中の公園を出歩いていればホームレスから物取りにあったり、強姦されてしまったりと危険な目にあうことがあるように、「危険」だと言われているところには絶対に近寄らないことが大切です。留学初期のころはもちろん、英語力が身に付き、海外での行動力が磨かれた後期でもこれは変わりません。時折、留学の最後に東南アジア諸国や中南米などを旅行する方もいらっしゃいます。旅行の際も留学と同様、特に治安があまりよくないと言われる地域に行くのであれば、事前の治安情報収集を怠らず、万全の備えで旅行しましょう。また、「大丈夫!」と楽観的に考えずに、テロや内戦などの続く地域などはできる限り避けるようにしましょう。
③多額の現金、貴重品は持ち歩かない!
日本人は裕福でお金を持っていて、且つ平和ボケしている印象が他国の人々にはあります。治安の悪い地域はもちろんのこと、イベントなどで大勢の人々が集まる地域や、観光名所などを訪れる際は、多額の現金、貴重品などを持ち歩かないようにしましょう。現金やクレジットカード、パスポートは一か所にまとめず、小分けにしてもち、貴重品などは原則持って行かず、持って行ってしまった際は、スーツケースなどに鍵をかけて保管するようにし、持ち歩くことのないようにしましょう。
パスポートも同様です。紛失・盗難にあった際に、パスポートは取り返しがつきません。もちろん現地の日本領事館や大使館などで緊急発行してもらえるケースもありますが、日本のご家族からのご協力を含め、かなり煩雑な手続きが必要です。パスポートは原則コピーを持ち歩き、留学中の日々の生活の中では、原本を持ち歩くのは止めましょう。
④犯罪にあったら抵抗しない!
抵抗しないというとニュアンスとして伝わりにくいかもしれませんが、命の安全を第一に考え、行動することという意味です。例えば、盗難にあい、ナイフを突きつけられ、「財布を出せ!」といわれたとします。
お財布の中にたとえ100万円入っていたとしても、お財布をわたしてください。お財布を渡さないことで、刺されたり殺されたりしては本末転倒です。犯罪者を極力刺激せず、要求に抵抗しない態度を示すことが必要です。
⑤見知らぬ人にはついていかない!
睡眠薬強盗、デートドラッグを利用した強姦、いかさま賭博、偽ガイドによるぼったくりなど、海外での犯罪の手口は非常に多様で巧妙です。残念なことではありますが、フレンドリーを装い、日本人留学生や観光客に声をかけてくる犯罪者がいる!という認識を持って、留学中の生活を送りましょう。
また、2016年10月にカナダで起きた日本人女性(留学生)の殺害事件の例にもあるように、近年急速に普及するSNSを利用した犯罪も後を絶ちません。インターネット上のコミュニサイトやアプリなどで出会い、素性の知れない異性とそのままお付き合い……というのは非常に危険な一面を持ちます。十分に注意するようにしましょう。
⑥買い物や食事は信頼のおけるお店でする!
日本でクレジットカードでの決済を行う際、事前に入力されていた金額が間違っていた!という話や、スキミングされて、気が付いたら口座のお金が無くなっていた!などの話はそこまで頻繁に聞きません。しかし、海外、特に観光地などでは、現地の物価やモノの価格を知らない旅行者、留学生向けに、粗悪な品を高額な価格で売り付けたり、カード支払い時に請求額を水増しされたりということも起こりえます。
できれば、このようなリスクのある地域での観光や旅行の前に、留学期間中、きちんと英語力を身に付け、価格の交渉や、本来のモノの価値などもきちんと確認できる状態にしておきましょう。また、購入したい商品は、壊れていたり破けていたりするところがないか、購入前にきちんと確認するようにしましょう。カードでの支払い時には、金額が間違っていないかどうか、店員はおかしな行動をとっていないかどうか、目を光らせましょう。
⑦ホテルだからといって気を抜かない!
ホテルだからといって安心はできません。ロビーで置き引きや、エレベーターの中での強盗など、危険は潜んでいます。特にユースホステルやモーテル、格安ホテルなどはセキュリティも甘く、同宿者による盗難なども頻発します。ホテルについても気は抜かず、置き引きや窃盗には十分注意を払うこと、また部屋に入ったら、カギをきちんとかけ、安易に部屋を開けないこと、徹底しましょう。
ホテルについたら、万が一、犯罪に巻き込まれてしまった場合を考え、必ず避難ルートを確認しておきましょう。
⑧その他
観光地や大勢の人々の中に入るわけではなくとも、日々の留学生活のなかで利用するもの、生活の中で意識していただきたいこともあります。
・かばん
トートバックはNG!チャックなどで必ず中身が見えないかばんを利用しましょう。
日本のように満員電車などはありませんが、日々の普通の生活のなかでもさすがにトートバックのように中身が丸見えのかばんは利用しない方がおすすめです。
・携帯電話やお財布、自身の荷物で席取りをしない
日本だと、レストランやカフェを訪れた際、席を確保するに伴い、鞄や財布、携帯などを席に置き、注文をしに行ったり、お手洗いに出たりすることがあると思います。海外で同じことをすると席に戻ってきたい際においてあったものは、なくなってしまっています。貴重品は肌に離さず持ち歩くようにしましょう。
・お酒の飲みすぎに注意
外国の方は日本人と異なりアルコールを分解するための酵素を多く持っています。よって日本人よりもアルコールに強い方が多くなります。日本でアルコールには強いと自負していた方でも、同じペースで飲んでいるといつの間にか飲みすぎてしまい、気が付くと救急車で病院に運ばれていた!なんてこともあります。また、お酒で楽しくなる場所にはデートドラッグや、ショットなどで酔わせてその後、物を取られたり、強姦されたりと危険が付きまといます。「日本ではない」という意識をきちんともち、節度あるお酒の楽しみ方をしてください。
4、さいごに。
内戦や紛争が続く地域やもともと犯罪発生率、殺人率などが高い地域にはそもそも留学しないというのが鉄則です。このような地域と比較すれば、若干治安が不安なアメリカもイギリスも、許容範囲内といえるでしょう(地域にもよります)。ただし、節度ある生活と「ここは日本ではない」という意識をきちんと持って生活していただかなければ、治安がよいと言われている地域や国でも危険な目にあってしまうことはあります。
仕事を辞めたり、高校や大学を休学したりして、覚悟を決めて挑む留学です。
長期間の留学は人生の中でもそう何度もできることではないですし、中学生、高校生、大学生の方であればこれから明るい長い未来が待っているにも関わらず、留学や旅行中に、犯罪に巻き込まれてしまうなど、そんな悲しい目に合っていいはずがありません。
ワールドアベニューでは、留学前、留学中ともに国内外でサポートをさせていただいておりますが、私たちの役目はあくまでサポートです。実際にご留学される皆さん、1人ひとりがきちんと危機管理意識を持ち、正しい知識・情報をきちんと持ったうえで、留学先へご渡航くださいね。
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